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「PC」の今後(2)~本体ディスプレイ~

最終更新:2015年8月7日

前回は、特に消費者向け薄型ノートPCから有線LANとVGA出力が失われつつあることと、それがパソコン要約筆記に与える影響について書きましたが、今回は別の変わりゆく要素、ディスプレイについてです。

突然ですが、IT業界には昔から「ムーアの法則」という、本当に有名な法則があります。

ムーアの法則 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

この法則は、一言で言えば「コンピューターの性能は爆発的に伸びる」というものです。さすがに元の発言からほぼ半世紀が過ぎた今、増加率は鈍っているように感じます。例えば2000年頃の一般向けPCのメインメモリは256MBだったように思いますが、現在は2~4GBです。せいぜい10~15倍ですね。もしも「18ヶ月ごとに倍」なら、12年前の256倍、つまり64GB程度になっているはずです。

しかし、それでもメモリは10年ほどで10倍程度にはなりました。

一方、この法則が成り立ちにくいと言われるのが、通信速度(正しくは通信帯域)です。ムーアの法則は半導体の進歩が前提ですが、通信帯域は半導体以外の影響が大きいからです。

しかし、この10年ほどは通信技術が大きく進歩した時代でした。2000年には多くの人の自宅でのネット接続手段はダイアルアップ(56kbps以下)だったと思います。2001年にYahoo!BBが登場、8Mbpsという数字を出して以来(実際に8Mbps出るかは別として)、日本では家庭でも数~数十Mbpsという通信帯域が実現しました。無線通信でも、2000年はせいぜいPHSのパケット通信(32Kbps)だったのが、現在は数Mbpsから環境や機器によっては10Mbps以上といった通信帯域が可能となりました。いずれも2~3桁の違いが出ています。

そんな中で、進歩のペースがゆったりなのが、ディスプレイでした。2000年頃、既にノートPCのディスプレイ解像度はXGA(1024×768)でした。2012年のノートPCの主流は、HD(1366×768)でしょう。30%ほど横に増えただけです。実際には、非常に細かいディスプレイも、PDAや超小型PCを中心としていくつかあったのですが、いまいち主流にはなりませんでした。

ただし、今後も同じとはいかないようです。きっかけは、2010年のiPhone 4でした。アップルが言うところの「Retina(網膜)ディスプレイ」の投入によって、解像度競争が勃発しました。

過去20年間弱のモバイル系機種について、個人的に思い当たった機種について、画面解像度をプロットしたものを示します。

画像 history_of_resolution.png


画像 history_of_resolution2.png


このグラフでは、持ち運び前提のノートPCと、極度に小さいノートPC、そしてPDAやスマートフォンやタブレットといった「非Windowsデバイス」について、記号を分けつつプロットしています。「あの名機が抜けてる!」という指摘はあると思いますが、短時間で作ったのでご容赦いただきつつ、ツッコミはメールフォームからでもお願いしたく存ずるところです。

だいたいの印象として言うと、2000年代後半にトップが急激に伸びています。超小型PCのVAIO Type Uや(当時の意味での)スマートフォンであるウィルコム/シャープのWS011SHは、解像度だけなら今[追記:2012年夏頃のこと]でも最新水準といっていいでしょう。

しかし、通常のノートPCの解像度は、150dpi以下程度に収まっていました。そもそも、基本となるWindowsが、設計時点では96dpiを前提としていたのです。現在のWindows 7では96dpi以外に、図中に赤く線を引いた「120dpi」と「144dpi」も比較的簡単に選べるようになっています。ただし、アプリケーションによっては、一部が欠けた表示になるなど、使いづらくなる場合もあります。

それでも、世の中の趨勢には逆らえず、通常のWindowsノートPCも、高解像度機種が出つつあります。台湾ASUSのZENBOOK Primeはその尖兵とでも言うべき存在で、11.6インチ液晶にフルHD(1920×1080)で190dpiの解像度となっています。今後、「ウルトラブック」を中心に、このクラス(150~200dpi)のノートPCが増えるのは確実です。さらに、一部ではもっと高い解像度の機種も検討されているようです。

【PC Watch】 【IFA 2012レポート】Acer、HPがClover Trail搭載タブレットを発表 ~Samsungは2,560×1,440ドット液晶搭載のノートPC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20120903_557069.html

【PC Watch】 【IFA 2012レポート】東芝、Windows 8におけるPC販売戦略を発表 ~Windows RTは当面見送り。2013年には4K出力対応dynabookも計画
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20120903_557092.html

上の記事にあるサムスンの2560×1440ドット機は、発売されれば、最大で210dpi程度に達する可能性があります。また下の記事にある東芝の4K dynabookは、詳細不明ながら、本当に出たら270~330dpi程度になると思われます。

そんな中、今年中に発売予定のWindows 8でも、少なくともデスクトップの従来アプリケーションを高解像度にうまくあわせる方法は提示されていないように思います[追記:この記述は理解不足による誤記です。以下、追記しました]。

[2015-08-07追記・ここから]
実際には、Windows Vista以降は高解像度(HiDPI)への対応がOSレベルで組み込まれています(Vista~8が「システムDPI」で対応する第1段階、8.1からが「ディスプレイごとDPI」で対応する第2段階です)。一方、アプリケーション開発側から見ると、開発環境によってHiDPI対応は手間や難易度に大きな違いがあります。
[2015-08-07追記・ここまで]

今後、高解像度化の流れは不可避だろうと思います。パソコン要約筆記への影響としては、次のことが考えられます。

(1) ソフトウェアとの不整合
(2) プロジェクターとの不整合
(3) 目の疲れ
(4) ノートテイク形式の場合の高品位化

(1)については、パソコン要約筆記ソフトそのものだけでなく、例えば前ロールをいじるためのテキストエディタなども関連してきます。mekikuについては、解像度があがっても大丈夫なつもりで作ってはいますが、近いうちに144dpiのWindows 7で動作確認しておこうと思います。

(2)は、表示用パソコンの解像度だけが上がった場合を想定しています。この場合、パソコン本体のディスプレイはフルHDなど高解像度な一方で、出力先のプロジェクターは解像度が低いため、不整合で思わぬトラブルになる場合が想定されます。前回も書きましたが、一般にプロジェクターはPCよりも更新ペースが低いのが現実です。また、プロジェクターはそれほど解像度競争に晒されていないため、PCとの不整合が出るのは避けられません。既にPC側でワイド液晶が普及したためにプロジェクターとの縦横比(アスペクト比)の不整合で、変に縦長な表示になる場合などが出ています。

(3)ですが、パソコン要約筆記ソフトが高解像度に対応しても、そもそものPCの解像度が高いと、普段見る画面の要素が小さくなり、目が疲れる場合があります。実際、要約筆記関係の知人では、今の120dpi程度の機種でも解像度が高すぎるという人もいます。

(4)ですが、ノートテイク形式とは、表示用PCを直接要約筆記の利用者が見る形のことです。私の身の回りでは、この形式も時折あります。当然、本体ディスプレイを見るのであれば、解像度が高いほどきれいな出力が期待できます。ただ、処理速度が追いつかないと、結果的には見づらくなるかもしれません。

まとめとしては、次のように言えると思います。

・PCを買う前に、リアルな距離で画面を見て確認
・文字が小さすぎたらWindowsの機能で拡大

後者については、コントロールパネルから設定できます。分からない場合でも「Windows 文字を大きく」「Windows dpi設定」などで検索すれば参考ページが見つかると思います。


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