映画館での字幕:現状(1)

作成:2016年9月20日

先日、ツイッター上で、次のようなやり取りがありました。

アメリカの映画館で借りられる「字幕俺だけ見えるマシーン」が素晴らしい - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/1022391

ここで出てくるデバイスはCaptiViewというものですが、それも含めて現状での映画館での字幕について、しばらく前に検索した結果をまとめておきます。

なお、全体としては英語版ウィキペディアをもとに、項目ごとの検索結果を組み合わせています。

Closed captioning - Wikipedia, the free encyclopedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Closed_captioning

不足や誤りなどありましたら、メールフォームでご指摘いただければ幸いです。

■概略

映画館で字幕を利用するための方式は、次のように分類できるようです。

名前が全く日本語になっていないのは、そもそも大半が日本では使われていないためです。使われないものには名前もつかないというわけです。

1.オープン・キャプション(open captioning):その場の全員に見える方式
1.1 フィルムに直接焼き付ける方式
1.2 上映時、別のプロジェクタで字幕を投映し、スクリーン上で重ね合わせる方式(DTS-CSSなど)
1.3 上映時に字幕を映像と重ね合わせて、まとめて投映する方式

2.クローズド・キャプション(closed captioning):必要な人だけが見える方式
2.1 後方から投映する方式(RWC)
2.2 小型の字幕ディスプレイを利用者が目の前に配置する方式(CaptiView, MovieReading)
2.3 メガネ型など、利用者がディスプレイを身に着ける方式

(※1)用語は、使う場面によって異なる場合があります。例えばテレビでの「クローズド・キャプション」は「ON/OFFが切り替えられる方式」のことです。
(※2)小分類には名前がないようなので、あえて説明的な文面としました。

以下、それぞれの項目について、主に海外での情報を紹介します。かなり長いのですが、ご了承ください。

■1.オープン・キャプション

「オープン」とは、特に何もしなくても字幕が見えているという意味です。日本で映画を字幕つきで見る場合、一部の実験を除いては全てこの方式となります。

主な特徴:
・ほぼ確実に字幕が見られる
(クローズド方式だと、機材などのトラブルで字幕が見られない場合があるのです)
・全ての観客に字幕が「見えてしまう」
・視線移動はある程度必要なものの、焦点調節は不要

オープン方式をめぐっては、2012年に米国で残念な事件がありました。

Md. Man Faces 5 Years In Prison For Angry Stunt At ‘Avengers’ Movie « CBS Baltimore
(メリーランド州の男、映画「アベンジャーズ」上映妨害で最大5年の懲役刑)
http://baltimore.cbslocal.com/2012/05/16/md-man-faces-5-years-in-prison-for-angry-stunt-at-avengers-movie/

映画にオープン方式で字幕がつくことに怒った男が、火災報知器を動作させて上映を止めてしまったのです。ちなみに記事中ではなぜか「closed captioned」とありますが、これは誤記でしょう(クローズド方式では、字幕を見るのは観客個人単位となります)。

この事件を知ったのは、次のブログ記事からです。

Fire Alarm to Protest Against a Captioned Movie? - Audio Accessibility
(字幕つき上映への抗議のために火災報知器?)
http://audio-accessibility.com/news/2012/05/fire-alarm-to-protest-against-a-captioned-movie/

■1.1 フィルムに直接焼き付ける方式
■1.2 上映時、別のプロジェクターで字幕を投映し、スクリーン上で重ね合わせる方式
■1.3 上映時に字幕を映像と重ね合わせて、まとめて投映する方式

これらは、字幕を表示する方式の違いです。元々は1.1しかありませんでしたが、映画がデジタル化する中で、映画そのものをプロジェクターで投映するようになったのとあわせて1.2や1.3が出現しました。

1.2の代表格は、DTS-CSS(Digital Theater System - Cinema Subtitling System)というものです。

DTS-CSS シネマサブタイトリングシステム | 製品情報 | シネマ | DTS JAPAN
http://www.dtsjapan.co.jp/cinema/p_CSS.html

DTS-CSSは、単一のディスクに、色々な言語の「音声」「字幕」「ガイド音声(視覚障害者向けの音声による情景説明)」を含められます。後述するRWC(字幕を後方から投映する方式)にも対応しています。

1.3については、米アクセシブル・メディア・センター(NCAM)のサイトに記載があります。

Frequently Asked Questions: Captioning and Description in Digital Cinema / NCAM
(よくある質問と回答:デジタルシネマにおける字幕やガイド音声について)
http://ncam.wgbh.org/invent_build/movies/access-to-digital-cinema/frequently-asked-questions-cap

How does open captioning work in digital cinema?
(デジタルシネマではオープン・キャプションはどうなるのですか?)

For open captions, an open-captioned version of the DCP is created by the packager; the theater needs to request the open caption DCP from the studio. The captions are then played out by the digital cinema system and projected on the screen, just like subtitles. No other special equipment is required.
(版元がオープン・キャプション版のDCP(映画全体のデータをパッケージ化したもの)を準備します。劇場はこの版のDCPを要求する必要があります。あとは、デジタルシネマのシステムが、字幕をスクリーンに投映します。特別な機材は必要ありません)


2016年現在、日本国内でも大半の映画館がデジタル対応しているため、日本語字幕も多くはこの方式を用いていると考えられます。

映画館のデジタル化|映画業界について|東宝株式会社 新卒採用2017
http://www.saiyo-info.net/toho/gyokai/digital.html

2009年から現在にかけての3D映画の大ヒットを受け、2006年に96スクリーンと言われたデジタル上映可能なスクリーン数は、2014年末時点で全国スクリーン総数3,364のうち、3,262スクリーンと増加し、映画館のデジタル化は一気に進むことになりました。


記事管理システムの文字数制約にかかったので、次の記事に続きます。


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